佐々木組は産業機械部品の製缶・溶接一筋に事業を続けてきた。切り板、ブラケットなど数cmサイズの小物から、走行用ベルトのサイドフレームでは長さ10m、重さ10tに及ぶ大物まで、ほぼ一点ものの多品種少量生産を行っている。
同社は1970年に住友化学の協力会社として創業。技術革新が進む中、CADやレーザー切断機をいち早く導入し、生産の効率化、精度の向上を進めた。1980年代には経営危機に陥った地域の企業から、スキルが高く、意欲ある従業員を受け入れたことで精密製缶のノウハウを取り入れた。
現在は住友重機イオンテクノロジーや日立住友重機械建機クレーンなど住友グループ関連の仕事を中心に半導体製造装置関連、造船関連製品も手がけている。


主力の精密製缶フレームはわずかな寸法の狂い、溶接のずれが完成品のゆがみを生む。このため溶接順序や速度、バランス、溶接機の電気量、熱分散などさまざまな点に気を配りねじれの発生を抑える。加工精度は長さ2mの材料でも±1㎜程度を実現。後加工での削りが少なく、加工時間の短縮が望めることから、大手の依頼が継続している。
こうした熟練技術は高張力鋼板(ハイテン材)の製缶、溶接にも生かされる。ハイテン材は発生したひずみを戻せない繊細な素材。熱をかけ過ぎると性質が変わり、急激な温度変化も割れの原因にもなる。素材が高価なため、無駄を出さない加工が求められる。同社はハイテン780を用いた厚さ9〜80㎜、長さ約10mの製缶溶接においても水平歪5㎜以内を実現。ハイテン590とステンレスなど異種金属を歪まず接合する技術も保有する。鉄、ステンレス、アルミ、銅、チタン、それぞれに特化した溶接を手がける企業は多いが、佐々木組はどのような素材にも対応する。「やってやれないことはない。チャレンジし続ける」、秋田華佳社長は力を込める。

現場は分業を進め、従業員それぞれがスキルを磨く。持ち場に専念することで会社全体として多様な作業が可能になる。近年は品質の一層の向上を目的に設備投資も活発。2016年は精密製缶の工程に3次元測定器を導入した。さらに生産管理システムも取り入れ、現場と間接部門をスムーズにつないで図面の受け取りから製品出荷までを一元管理。リードタイムの短縮を図っていく。
秋田社長は愛媛県の鉄工所では珍しい女性経営者。製缶にこだわり、真心を込め感動あるものづくりの環境づくりを進める一方、自社製品の開発も視野に入れる。「女性も含め積極的にものづくりに取り組める会社を目指したい」と表情を和らげる。

