曽我部鐵工所は1935年に設立。戦時中は軍需品を製作し、戦後はプレス関連製品を手がけていた。60年代後半には旋盤メーカーとして事業を行っていたが、販売窓口の商社が倒産したことなどを契機に、69年から現在の主力事業でもある建設機械向けの歯車の製造を始めた。同社の技術力は大手建機メーカーから高く評価されており、現在では大手建機メーカーのパワーショベルに同社の歯車部品が採用され、世界中で活躍している。


同社が主に手がけるのは、パワーショベル向けの減速機。減速機とは、歯車などで動力の回転速度を減少させてトルクを上げるための装置で、複数の歯車の組み合わせで構成されている。パワーショベルの旋回部分と走行部分に用いられており、少ない段数で大きな減速比を得ることができるので、大きなトルクを伝達できることが特徴だ。同社では、歯車の設計から製作・組み立てまでを一貫して行う体制を構築。設備も建機向けに特化したものを揃え、大量ロットの発注にも対応できることも同社の強みだ。
同社では「単純にモノを作れる技術力は当然だが、いかに安く作れるかという技術力を追求している」(曽我部優弘社長)という。そのためには、受注状況に応じた材料の発注や余分な在庫を発生させない生産計画、生産ラインの適正なレイアウトなど「実際に作る前の段取りが大切」で、こうした積み重ねがコストダウンにつながるという。
2011年に始めた『改善提案発表会』は、こうしたコストダウンの意識を全社員で共有できる重要なイベントだ。同発表会は年2回開催しており、これまでに多くの改善提案が現場に反映されている。曽我部社長は「負けたチームは本気で悔しがるし、何よりも改善しなければならないという意識が根付いたことが大きい」と、社員の意識変化を実感している。
新たな事業として、08年から風力発電用増速機のメンテナンス事業を始めた。同社では、これまで建設機械に特化した事業展開を進めてきたが、こうした歯車技術を活用して新市場の開拓にも着手している。
一方グローバル展開の足掛かりとして、10年に中国・蘇州市に現地法人を設立し、中国市場向け減速機の生産を始めた。「今後東南アジアやインド、米国などにチャンスがあれば検討したい」とするが、基本的には建機メーカーの進出があってこその話。そのためにも「声をかけてもらえるような関係と実力を築いておくことが大切」だとしている。
