松川工業は、1958年に前身の松川組が住友重機械工業愛媛製造所から各種鋳物製作を請け負ったのをきっかけに同製造所内で創業した。63年に現社名に改名し、69年には治良丸工場(新居浜市萩生)を建設。82年には、30トンクレーンや大型工作機械を完備した黒島工場(新居浜市黒島)が完成。現在は、黒島工場に大型工作機械を設置して生産設備を集約し、得意とする大型・長物製品の機械加工に対応できる体制を確立している。


同社が主に手がけるのは、製鉄所向けの大型圧延ローラーで、最大で長さ5メートル、直径80センチメートル、重さ10トンという大きさになる。材料にはハイスやアダマイト、ダクタイルなどといった高硬質材料が用いられる。研削盤や旋盤、複合加工機などといった工作機械は、大型・長尺物の加工に対応した大型機を揃え、切削工具も長年の経験から加工形状に応じて高硬質材料に対応した専用工具を使い分ける。

同社では、完成品より一回り大きなサイズで粗加工された材料を提供され、それを高精度な切削加工を行う。まず初めに行うのが「芯だし」と呼ばれる削り出す方向を決める作業だ。提供された材料は微妙に歪んでおり、削り出す方向も材料の状態に応じて調整する必要がある。この判断を下すには多くの経験が必要で、判断を誤ると指定サイズ通りに削り出せず「材料が無駄になってしまう可能性がある」(松川卓矢社長)という。
金属材料は外気温によって膨張や収縮し、一日の間でも30~40ミクロンの差が生じるため、『温度管理』が重要で、微妙な誤差が「現場で取り付ける際に、指定された箇所に入らなくなる原因になる」(同)という。そのため指定された寸法で切削加工するのではなく、実際使用される環境を想定した切削加工が求められる。同社では、こうした作業現場の温度に応じた金属材料の膨張・収縮データを長年蓄積し、そのデータを元に加工寸法を決定しており、松川社長は「長年のノウハウが財産」と胸を張る。

黒島工場
治良丸工場