イズミ精機は、住友重機械工業のプラスチック金型製造部門として、住友重機械工業プラスチック機械事業部と三光機械工業(新居浜市)の共同出資により1987年に設立された。
主力事業は、射出成形と呼ばれるプラスチック製品の製造技術で用いられる金型の設計・製作。主にヨーグルトやプリンの容器、ペットボトルなどの食品関連製品や、注射器やシャーレなどの医療関連製品向け金型を手がけている。
また容器の成形とラベルの貼り付けを同時に行う『インモールドラベリング』という射出成形技術に用いられる金型や、不要な原材料を出さずに樹脂を金型に注入できる『SHIバルブゲートシステム』にも対応。ラベルの多色化や遮光性、コストダウンといった付加価値を提供する金型も製作している。


射出成形は、プラスチック樹脂を金型のすき間に流し込んでプラスチック製品を成型する。同社の金型で成型される製品は、厚さ0.4㎜~0.5㎜と肉厚が薄く、そのため金型には高い精度が求められる。中でも「同心度を出すことが難しい」という。同心度とは簡単に言うと、中心軸を基準にして均一に加工されているかという指標。近年では食品容器の形状も複雑化しており、同社では位置決めの方向を変えるなどしてテストを繰り返して精度を高めていき、最後に職人の手による『磨き』によって仕上げていく。商品によっては容器表面に透明度の高いものや、ザラザラしたものといった見た目や質感を求められる場合がある。こうした質感は、金型表面の処理具合に左右される。同社では「微妙な寸法調整や風合いを出すことは、機械ではなかなかできない」と、手作業にこだわる理由を語る。
食品メーカーは、食品向けの容器に独自性を求めるため、容器デザインは商品ごとに変わる。そのため同社では「同じ金型を製作することは少なく、毎回新しい金型づくりにトライしている」という。十八角形で模様付きのもの、陶器のような質感といった難易度の高い金型製作の実績も持つ。こうした毎回異なる要求と向き合う中で「新しい仕事に対して何が課題かを見極めることが重要」と、課題解決に向けた試行錯誤の積み重ねが、金型設計のノウハウや加工技術のレベルを高めてきた要因だ。
今後同社では、生産工程の自動化を推進していく方針。2016年までに体制を構築したいとしているが、最終工程の研磨工程は「機械には変えられない」と、これまで通り『匠の技』が活かされるという。また繁忙期の対策として、金型部品の機械加工などが外注できる協力企業のネットワークを構築していく計画。合わせて協力会社の評価や指導ができる体制も整えていく方針だ。
