飯尾電機は、電動機の補修事業者として1947年に先代が四国中央市で創業した。住友関連各社の受注から増えたことから新居浜市に本社を移転した。73年に住友重機関係の量産モーター製造部の名古屋移駐に伴い電磁コイル関係の受注を開始。その後、大型重量物にも対応できるように92年に現在の主力である西条工場を建設した。


同社では2つの柱事業がある。モーターメンテナンス部門では、地元企業の生産工場内で使われるモーターの保守メンテンスをはじめ、モーターの補修の依頼が全国から寄せられる。その背景には数十年前に製造されたモーターがメーカーの保守期間が終了しても現役で稼働する工場が全国には数多くあり、故障してもメーカーでは修理対応してもらえない状況がある。昨今ではインバーター式のモーターの需要も増えてきたが、高温や屋外などの環境下では敬遠される傾向にあり、その寿命も10年程度と言われている。一方で巻線形モーターは構造がシンプルであるがゆえに、耐久性に優れ現場での需要も根強く残っている。「40年以上使われているモーターの修理の依頼もある」と、飯尾太一社長は語る。
もう一つの柱である電磁コイル部門では、鉄くずなどを吊り上げるリフティングマグネット、クレーンの巻き下げ時に低速させるブレーキマグネットなどの大型のコイルから、最先端の半導体製造装置や医療関連の検査装置に使われる特殊なコイルまで様々なコイルを製作している。大型のものでは重量600kgある900×2000mmサイズのコイルを製作した実績もある。モーターの修理技術をベースに培われてきた巻線技術は、設計図を元に決められた形状に職人が手作業で微妙な曲がりを調整しながら一品一品を製作する。「特に絶縁には気を使う」という作業では絶縁処理を施し、線間を保ちながら巻けるレベルになるには10年以上の年月が要する。社訓でもある「技なくして策なし」と、飯尾社長は社員教育にも力を入れていきたいと話す。
