萩尾高圧容器の前身となる萩尾鉄工所は、1934年に新居浜唯一のネジ専門工場として創業。その後、認可を得てLPガス容器の製造をはじめ、61年に萩尾高圧容器として分離独立した。78年には現在の本社工場が多喜浜に完成した。
本社工場では量産体制を確立し、家庭用・業務用燃料の2kgから50kgまでの様々なサイズのLPガス容器を日々生産している。容器の成型から、熱処理、検査、塗装まで社内で一貫して生産。中でも平らな板材からプレスして立体的な椀形状に成型する深絞り技術には、独自の高度な成型技術が活かされている。他のLPガス容器メーカーにはない機動力を活かし短納期にも対応でき、四国でのLPガス容器のシェアは約50%を誇る。


昨今の社会の変化からLPガス需要は減少傾向にある中で、萩尾広典社長は「長年培ってきたガスと容器に関する技術を使って新たな商品開発を行ってきた」という。容器メーカーとして、小型のフロンガス容器からプラント設備の大型タンクまで幅広く手掛け、自分たちの手で設計してきた蓄積がある。
同社が開発してきたものの1つには、LPガス燃料電池用脱硫器がある。これは燃料であるLPガスに含まれる硫黄分の残留濃度が上がったときに燃料電池本体に悪影響を与えてしまうことから、硫黄分を除去するために開発された。また2011年より注力しているベルトコンベアローラは、地元企業のフランジメーカーの東和工業と共同開発したものだ。海運業の現場で使われるコンベアローラーは塩害で内部が錆びてしまい寿命が短かった。これを当社の持つ深絞り技術や全周溶接構造にして気密性を高めることでこれを解決した。部品点数も従来品に比べて少なくなることからコストダウンにも貢献することができた。日本国内に留まらず海外の新たな市場へもチャレンジして販路を広げている。どちらの案件も「客先の困っていることを解決するために形にした」と萩尾社長は振り返る。

今後同社では容器メーカーとしての強みを活かし、地元企業との連携も更に深めていきたいと考えている。中小企業の資源は限られており、一社では対応できないことも複数社が連携することで解決できる可能性がある。萩尾社長は「この地域には様々なものづくりの会社があり、それだけのポテンシャルが秘めている」と、これからも客先からのニーズに応えていきたいと、新たな事業展開にも意欲を燃やしている。
