コスにじゅういちはアルミニウムの精密加工技術を強みに成長してきた。1948年の創業以来、住友グループの協力会社として厳しい品質要求に応え、蓄積してきたノウハウが基盤となる主力事業が、住友化学から受託しているアルミニウムスパッタリングターゲットの製造である。これらは家電製品や携帯電話などの半導体ICチップや液晶ディスプレイの配線材料の製造に利用されている。
現在は加工領域がマグネシウムやチタン、ニッケルなど難削材にも広がり、半導体製造装置や医療機器の高精度部品、住友重機械工業から受託した小惑星探査機の部品など、幅広い分野に技術を生かしている。
一方、精密金属加工分野では半導体製造装置や医療機器部品で培った技術のさらなる展開を目指し、2015年に航空機部品製造の認証を取得。新たな顧客獲得に向け、挑戦を続けている。
こうした既存事業に加えて力を入れているのが自社製品だ。2011年に新規開発室を立ち上げ、「超高圧無脈動ホモゲナイザー」を完成させた。ホモゲナイザーは油などを微細化する装置。食品分野のほか、昨今はファインケミカル分野の高機能材料の処理にも用いられるようになっている。装置技術は確立されており、参入は後発になるが、より付加価値の高い製品で勝負する。
「永続的に続く需要を考え、食品製造装置は将来も国内に残ると判断した」と、近藤基起社長。開発分野を絞り込み、設計者と情報収集に当たって社内の技術資源が生かせるホモゲナイザーに照準を合わせた。
完成した製品は既存の装置以上に処理液を微細化できる200メガパスカルの超高圧と、圧力変動のない安定流量の処理が競争力。より高品質な処理が求められる食品以外の分野でも需要が見込める。愛媛県内ではセルロースナノファイバー(CNF)の研究開発が活発だが、製造の微細化工程に時間がかかる課題がある。超高圧処理によって生産性を向上できることから、この分野での利用拡大も期待する。
ホモゲナイザーはすでに委託販売先を確保し、今後の用途開発も加速する見込み。「メーカーとして自社ブランドの製品を作りたかった」という近藤社長のもと、コスにじゅういちは新たな扉を開いている。